2012年4月13日金曜日

国家の領域


国家の領域

第5部 国家の領域


この部の目次

1.国家の領域
2.領土
3.領海
4.領空
5.領海及び河川の制限
6.領空の制限
7.公海とは
8.公海の制限
9.公海での犯罪行為
10.公海上での各国の権利
11.大陸棚制度
12.大陸棚の範囲と沿岸国の義務
13.排他的経済水域
14.深海底
15.南極
16.宇宙
17.まとめ


1.国家の領域
 ここでは領土、領域の考え方や、公海上の事、更に領土問題について考えたいと思います。

 国家の条件の一つに「一定の領域」というものがあります。国家はこの領域内を排他的に、つまりは他国に気兼ねなく自由にできる支配権(領土主権)を持っています。この主権を侵害する事は、重大な国際法違反となります。
 それでは、領域にはどんな種類があるのでしょうか?


2.領土
 領域の中でも一番重要なものが、この領土です。人間は陸上生物なので、地面がないと暮らしていけません。船の上での生活もできなくはないですが、やはり陸地に比べれば不安定ですね。もっとも、陸地自体もマグマ(海洋プレート)に乗った巨大な船と言えなくはないのですが。
 この領土を取得するには、どのような方法があるのでしょうか?

・征服

 読んで字の如く、他国を実力で併合する事です。これは侵略行為であり、当然国際法違反です。

・先占

 誰もいない土地を発見し、領有の宣言をして占有する事をいいます。現在では未発見の土地などまずありえないので、これによって領土が増える事はありません。

・時効

 他国のもの� �った土地を時効によって取得する事です。それには、幾つかの条件があります。

・割譲

 他国の領土を条約等により、平和的に手に入れる事です。これは、これからもありえます。もっとも実例は平和的ではなく、戦争の結果領土の一部を手に入れた(これは、その土地に侵攻して手に入れたわけではない)事が多いのですが。ちなみに全ての領域を譲る事を併合といいます。
 この問題点は、割譲する土地に、すでに人が住んでいる場合ですね。これは割譲当事国間にて条約等で決めます。これについての一般的な国際法はないようです。
 また、売買による割譲もあります。例として、1867年にアメリカがロシアから720万ドルにてアラスカを購入した事があります。

・添附

 新しく土地� �できた時の事です。これは人工的な土地と、自然発生的な土地に分かれます。
 人工的な土地といえば、埋立地が代表的ですね。また恒久的な湾岸工作物(防波堤など)も含まれます。ちなみに、人工的な島は『領海及び接続水域に関する条約』の第10条に「島は自然に形成された陸地」と条件がつけてあるので、認められていません。

 自然発生的な土地は、海岸に自然に土砂が堆積してできた土地や、溶岩が流れ込んでできた土地をいいます。このうち、海底火山によって作られた新島も含まれる事がありますが、どこの領域になるかは話が別になります。
 新島がどこかの領域内(12カイリ内)にできれば問題ないのですが、公海上にできた時が問題です。基本的にはその近くの国が取得しやすいのですが、ある意� ��では早い者勝ちの側面もあり、ましてやお互いの領海線上にできたら大変です。新島を巡り熾烈な争いが発生します。有名な例としては、1831年に地中海にできた火山島を巡って、イギリス、フランス、シチリア王国が醜い争いを行った事があります。しかして、この火山島は翌年、再び海に没していっちゃったのですが…。
 更に『国連海洋法条約』にて人の住めない岩は、排他的経済水域を有しないとありますので、新島取得後も扱いが難しいようです。


3.領海
 領土や群島基線から一定の幅を持つ帯状の海域を領海といいます。領海は、国の支配下におかれ、その外は全ての国が自由に行き来できる公海となります。
 領海内でも、外国船舶の無害通行権は認められていますが、当然の事ながら不審船のような危害を加える船は別です。
 この領海の距離は、かつては陸地から3カイリとなっていました。これはちょうど当時の砲弾の射程距離になります。それから段々領海幅が拡張し、現在では12カイリと定められています。

 この領海の内部、河川、運河、湖沼、港湾、内海などの陸地に密接に関係する水域の事を「内水」といいます。この内水には、基本的に外国船舶は進入できません。
 この内、港湾とは、ある一定の条件の面積を持った半円上 の海で、もっとも外側にある陸地同士の距離が24カイリ内にある事が必要です。
 内海とは、全て同じ国の陸地に囲まれた海で、2箇所以上の出入り口で公海に繋がっていて、尚且つ全ての出入り口の幅が24カイリ以内の必要があります。日本では瀬戸内海などがこれに相当します。

 またフィリピンのような群島国家においては、一番外側にある島と島を結び、その中にある海を「群島水域」とする事ができます。また、島同士を結んだ線を群島基線とし、領海区域はこの線から測られます。但し、群島水域が即内水になるわけではなく、外国船舶の通行は可能です。


中国を交換する場所

4.領空
 領土、及び領海の上空を指します。この区域は完全に排他的な主権を持っており、ここに進入してきた未確認航空機は、警告の後、撃墜されてしまいます。
 ただ、領空には一定の上限があり、宇宙空間は領空に入りません。従って国の上空に人工衛星が入ってきても良い事になります。しかし、一定の上限とは何処までか、現在でもはっきり決まっていません。
 大体、人工衛星の回る事が可能な、120km程度にて了解が得られているようです。


5.領海及び河川の制限
・国際河川
 領域内では、基本的に国の自由な行動が保障されています。しかし、何でもできるという訳ではありません。領域権にも制限があるのです。

 日本のような島国ではピンとこないのですが、陸上に国境線を持つ国には、多国間に跨る大きな河川が存在します。これを国際河川といいます。
 もっとも国際河川と認定されるには幾つか条件があり、第一に河川の沿岸国が条約を締結し領域権を制限している事、第二に条約において外国船舶の航行を許可している事などが必要です。
 この国際河川に認定されれば、全ての国の船は平等に通航する事ができ、通航料も取られなくなります。
 最近ではこの商業的役割の他に工業用の資源として、又は環境問題� ��対照としても関心が高まっています。例えば上流で汚染された水は、下流の国にも被害を与えたりするからです。

・国際運河
 洋の東西を結ぶ運河の事です。南アメリカのパナマ運河、北アフリカのスエズ運河などがこれに当ります。
 この運河は、国際運河として全ての国の船舶が自由な航行を行えるよう、条約にて定められています。
 国際運河は交通の要所であり経済的・軍事的にも重要拠点となりえます。従ってこの両運河では、長い事血生臭い争いが絶えませんでした。今では条約により自由な運河になっていますが、潜在的に紛争要因を抱えている場所といえます。

・無害通航権

 国家の周囲の海域は、12カイリまでは領海となります。この領海内は国の自由裁量が許される� �ですが、船舶は国際交通の利益に重要な役割を果たしているので、同時に全ての国籍の船も通航する権利を持っています。例え北朝鮮の船といえども、通航する事が出来るのです。これが無害通航権です。

 但し、幾つかの条件が必要になります。
 一つは沿岸国に無害であること。武装して威嚇したり、情報収集したり、麻薬などの違法品を運んだり、漁をしたり、調査測量したり、核廃棄物流す等の汚染行為、即ち沿岸国に危害を加える行為をしてはいけません。
 また、人命救助や遭難した場合など、不可抗力な時以外では停船してはいけません。あくまで通航するだけです。
 潜水艦は浮上して、国旗を掲げる必要があります。
 沿岸国は法律を制定して、船舶に関わる安全の為の規制、保護をする事が出来ま す。事故防止の為に航路を指定する事も出来ます。これらの法律は、相手国によって差別をしてはいけません。しかし、自国の安全の為に不可欠だと思われる場合は、無害通航を一時的に、どの国にも一律に停止する事ができます。

・国際海峡制度

 運河と同じ様に陸地と陸地の間、海と海を結ぶ海峡も交通の要所になります。地中海の出口であるジブラルタル海峡や、英仏間のドーバー海峡が有名ですね。
 この海峡は、狭い(沿岸国同士の距離が24カイリ内)と海峡全てが沿岸国の領海に入ってしまいます。もちろん、船舶は無害通航権を持って航行できるのですが、航空機は通れず、潜水艦は浮上航行しなければなりません。また、沿岸国が無害でないと判断したら、場合によっては外国船舶の通航が出来� ��くなってしまいます。これでは少々不便です。
 そこで上記の無害通航権とは別に、海峡の通過を認める制度が『国連海洋法条約』によって決められました。
 これにより国際海峡と認められた海峡は、通過するだけなら公海と同じ様に通れるようになりました。
 もちろん通過だけなので、調査測量などをしてはいけません。また、沿岸国は安全の為、国際機関の関与を経て航路帯を指定する事が出来ます。


6.領空の制限
・領空に対する制限
 領海と違って、領空には無害航行権などはありません。主にスピードの違いによるものだと思われます。船舶だと、高速船以外では精々時速50〜60キロ程度でしょうが、航空機はマッハを超えます。12カイリ(約22キロメートル)程度、1分ちょっとで横断してしまいます。従って、航空機は領空を飛ぶ際、領域国の許可を取らなければいけません。

 これでは少々不便だ、という事で、『パリ国際航空条約』(後に『国際民間航空条約』の成立で廃棄)などが結ばれました。これによると、締約国の国籍を持つ民間機は、領域国の着陸要求に従う事を条件に、事前の許可なしに航行し着陸する事が出来ます。
 これについて、領域国は飛行禁止区域を� �ける事が出来ます。また、この条約は民間航空機のみに適用され、軍用機は別に許可を必要とします。
 国際定期航空業務(国際定期便)も除外されます。国際定期便は、二国間の航空協定の締結によって飛行可能になります。これは国家間の利害関係が絡んでくるので、すんなり締結はできないようです。


7.公海とは
・おお我らが自由な海、公海
 かつての大航海時代、世界を支配しようとしていた大国、スペインとポルトガルは、それぞれ大西洋の西側と大西洋の東側及びインド洋を自国の領有にすると主張しました。しかしスペインを押さえ、台頭してきたイギリス、オランダはこれに反対し、海の自由を主張します。やがて、この考えが公海上の自由へと発展し、国際法上確立することになりました。


今日のようなアーキテクチャは何ですか

 公海とは、国家の領域圏(内水、領海等)を除く全ての海を指します。公海は全ての国に開放され、いかなる国も公海を支配下におく事はできません。これを公海自由の原則といいます。
 そう、公海は自由なのです。船の航行も、漁業も、飛行も科学調査も自由に行えます。どんな事をやってもいいのです。…となると犯罪も自由になってしまうので、やっぱり制限があります。無秩序というのは、本当の意味での自由ではないのです。


8.公海の制限
 公海上では、全ての国が自国の旗を掲げて航行する事ができます。その船舶は公海においては旗国(その船の属する国)の排他的管轄権に服します。つまり船舶の中では、その国の法律が適用されるわけですね。いってみれば、移動する小さな国家領土のようなものでしょうか。

 船舶には各国の法に基づいて国籍が与えられます。この国籍を複数持つ事はできません。便宜的に国旗を使い分ける船は、無国籍船とみなされます。また、原則として航海中に国籍を変更する事はできません。

 航海中の安全の為、信号の使用や船舶の構造について一般基準が設けられています。旗国はそれらの基準が守られているか、監視する義務があります。

 また、各船舶の船長には、海難救助の義務� �あります。通報を受けた船は、可能な限りの速度で救助に向かわなければなりません。
 船舶が公海上で事故を起こした場合、加害船の旗国に刑事裁判管轄権があります。


9.公海での犯罪行為
 公海において、次のような事は犯罪行為として処罰されます。

・海賊行為

 公海上において、私的な目的で他の船舶を攻撃、略奪を行う事を海賊行為としています。海賊に対しては、全ての国の船舶は協力し、逮捕、処罰をする権利があります。逮捕された海賊は、逮捕した国の裁判にかけられます。
 但し軍艦や政府の船舶が、政治的目的をもって同様の行為を行った場合は、国際法上の海賊行為とはみなされません。それが国際的非難の対象になるかどうかは別として。

・海洋汚染

 公海上の船舶は、旗国の管理下に置かれるので、何らかの問題を起こしてもその旗国の法によってしか取り締まる事はできません。しかし海洋の汚染は沿岸国に甚大� ��被害を与え、時として地球環境に破壊的影響を与える為、国際法によって全ての国に海洋環境の保護を義務付けられています。これにより、各国とも海洋保全の義務と、賠償責任を負うことになりました。また、海洋汚染を起こした船舶は、入港国(その船の国籍の国でなくても良い)によって調査され、裁判にかけられる事になります。
 特に放射性廃棄物に関しては、各国とも特別に防止する措置をとる義務があります。

・その他の犯罪

 公海上といえども、犯罪行為は禁止されています。
 まずどんな国であろうとも、自国の船舶による奴隷移送は禁止されています。また、麻薬や向精神剤の不法取引、公海からの無許可放送も禁止されています。各国はこれらを防止し、処罰する為の法律を制定するよ う、義務付けられています。
 時々ネットで、北朝鮮人民の洗脳を解く為、日本海から北に向かって放送をしてはと書かれていますが、国際法上簡単にはできないようですね。


10.公海上での各国の権利
 公海上では船舶は旗国の管轄権内にあり、他国は手出しができません。しかし次のような場合においては、各国は他国籍の船舶に対して権限を行使できます。

・臨検

 軍艦などの政府の公用船、及び正当な権限を付与された船舶は、他の海賊船や国際犯罪を犯している船舶に対して、臨検する権限があります。

・追跡権

 沿岸国は、自国の領海内で犯罪行為をした船舶を追跡する権限があります。これは追跡が中断なく行われた場合には、公海まで追いかけて拿捕、処罰をする事ができます。但し、逃亡する船舶が自国、又は第三国の領海に入った場合は、この追跡権は消滅します。

・接続水域

 沿岸国は自国の領海内において� �犯罪を取り締まり、拿捕する事ができます。しかし現在では船舶のスピードが上がり、12カイリの領域内では犯罪阻止が難しくなりました。また、伝染病を蔓延させている船舶の入港を制限する必要もあります。
 そこで沿岸国は、領海線より最大24カイリの範囲において、犯罪や衛生上の管理をする事ができるようになりました。これらの特定の管轄権を行使できる水
域を、接続水域といいます。

 このように、公海においても一定の制限や義務が、国や船舶には存在します。これらの決まりを守っていれば、全ての国は自由航海を行えるというわけです。


11.大陸棚制度
 陸地から沖合いに向かって海は段々深くなっていきます。しかし真っ直ぐ深くなっているわけではありません。大体、水深200m前後の比較的浅い深さで海底が続き、急角度で深海に沈んでいくのです。この浅い部分を「大陸棚」と呼んでいます。

 大陸棚は第二次大戦後、石油や天然ガスの宝庫として注目されるようになりました。例えばイギリスの北海油田のように、海底から多くの資源が産出できると思われたからです。現在では地下資源の約40%以上が大陸棚にあるともいわれています。そこで1945年、アメリカが大陸棚の資源は自国に属するとトルーマン宣言を発すると、他国も次々と権利を主張し始め、国際間に混乱が生じました。


どのような歓声アイオワ州地方紙

 そこで国連は1958年に第一回海洋法会議を開き、『公海に関する条約』、『領海及び接続水域に関する条約』、『大陸棚に関する条約』、『漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約』の4つを定めました(4つ合わせて『ジュネーブ海洋法条約』という)。但し、条約内容については議論紛糾し、実際に効力発生したのは随分後になります。

・大陸棚に関する条約(大陸棚条約)

 この条約では、まず大陸棚の開発権利は沿岸国にあると定めています。

大陸棚に関する条約
--------------------------------------------------------------------
 第二条 沿岸国の権利
  1 大陸棚の探査、開発権は沿岸国にある。
  2 沿 岸国が大陸棚の探査、開発をしなくても、他国は口出しできない。
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 ここでの沿岸国の権利は大陸棚の探査及び開発にのみ認められています。従って公海上は、他の国は自由に行き来できます。


12.大陸棚の範囲と沿岸国の義務
 ところで大陸棚制度の範囲ってどのくらいでしょうか?
 条約締結当初は水深200メートルまでの海底水域を大陸棚としていましたが、これは開発ができる範囲として採択されたものです。しかし技術の進歩によって、それ以上の海底での開発が可能になりました。これにより、沿岸国が開発範囲を広げようと主張し、水深200mの基準は意味を失ってしまいました。

 そこで国連海洋法条約において距岸200カイリまでを「排他的経済水域」とし、海底、海中に関係なく天然資源開発は沿岸国の主権となりました。200カイリを超えて大陸棚が続いている場合は、最大350カイリまで海底についてだけ開発権利があります。

 ちなみに、海底の資源の中には「採捕に適した段階に� ��いて海底面若しくはその下で静止しており又は絶えず海底に接触していなければ動くことができない生物」も含まれています。つまり、カニや貝のように海底に貼り付いていて、素早く動けない生物という事ですね。
 更に200カイリを超えて開発を行った場合、次のような義務が課せられます。

国連海洋法条約
--------------------------------------------------------------------
 第八十二条  二百海里を超える大陸棚の開発に関する支払及び拠出
  1 200カイリを超える大陸棚の開発を行った場合、沿岸国は金銭又は現
    物を支払わなくてはならない。
  2 支払いは最初の5年間はなく6年目より生産額(量)の1%を支払う。
    この割合は毎年増え、最大7%となる。
  3 生産された鉱物を100%自国で使用している開発途上国は、支払いを
    免除される。
  4 支払いは国際海底機構に行い、開発途上国などに衡平な配分基準に基づ
    いて配分される。
--------------------------------------------------------------------

 開発国は国際海底機構を通じて発展途上国の利益とニーズを考慮して、締約国に分配しなければなりません。その拠出率は最大 7%になります。


13.排他的経済水域
 1972年、アフリカのヤウンデ会議において、沿岸国は距岸200カイリ内の全ての開発について、排他的管轄権を行使できるという主張がされ、やがて途上国を中心に支持されるようになりました。
 最初は消極的だった先進国側も、その内漁業に限っては認め始め、1976年にアメリカが『二〇〇カイリ漁業水域法』を成立させると、ヨーロッパ諸国、カナダが同調、ついでソ連も水域の設定をしました。日本も対抗措置として1977年に200カイリの水域を設定しています。
 そして1982年、国際海洋法条約において200カイリ排他的経済水域が制度化される事になりました。

 この条約によって沿岸国は海底、海中を問わず、全ての資源に対して主権的権利と、構築物の建設、科学調査、環境保全� �管轄権を持つようになります。もちろん、環境等に対する責任も沿岸国が持ちます。
 排他的経済水域において沿岸国は、生物資源保存を考慮して漁獲可能量を決定できます(その為の科学的データ等は定期的に国際機関に提出)。その漁獲可能量内の漁ができるのですが、沿岸国がそれだけの漁獲をする能力を持たない場合、他国に余剰分の漁獲を認めなければなりません。また、内陸国などの地理的不利国は、同一地域の沿岸国の排他的経済水域における開発に参加できる権利があります。


14.深海底
 1967年の国連総会において、深海底の開発は全ての人類の為にするべきだ、との決議が採択され、ついで1970年の国連総会にて深海底は人類の共同遺産でありどの国の領域にも属さず、世界平和の為に利用されるべきだ、という決議が採択されました。この採択によって宣言された原則が『国家管轄権の範囲を超えた海底及びその地下を律する原則宣言』です。
 国連海洋法条約は、この原則を元に全ての条約締結国によって構成される国際海底機構を設立し、深海底開発の管理をする事を規定しています。この国際海底機構の本部はジャマイカにあり、全ての条約締結国による総会と、三十六ヶ国で構成される理事会によって運営されています。



15.南極
 南極は自然環境が苛酷な地域です。従って他の地域のような「先占」による領土の取得が非常に困難でした。
 20世紀初頭、イギリス、アルゼンチンなど計7ヶ国が海岸地帯の発見や探索を根拠として、極点を中心にした扇状の土地の領有を主張しました。セクター理論と呼ばれる領有権の主張です。
 しかしこの7ヶ国の間でも領土の範囲が競合してしまい、争いになりました。
 これに対しアメリカは1920年に南極が発見されて以来(発見年は諸説あり)南極の国際化に取り組んできました。1948年、アメリカは国際会議を召集し条約を結ぼうとしましたが、この時は失敗に終わっています。しかし1959年に再度国際会議を開き日本、ソ連など12ヶ国の同意を得て『南極条約』を成立させました。

南極条約
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前文 アメリカをはじめとする12ヶ国の政府は、南極の平和利用が全人類の利
   益である事を認め、南極の科学調査の国際協力が科学上の利益及び全人類
   の進歩に沿うものと確認し、その為の条約が国連憲章の目的と原則を助長
   するものと確信して、この協定を結んだ。
--------------------------------------------------------------------

 これにより南極では領土権や請求権が凍結され、科学的調査の自由、国際間の協力が定められました。また南極の平和的利用が決められ、軍事基地の建設、軍事演習などの禁止や、核爆発(核実験)、放射能廃棄物の処理の禁止も盛り込まれています。
 これ以降、1972年の『南極アザラシ保� ��条約』、1980年の『南極生物資源保存条約』などが締結されています。

 ところで南極は「吹雪と氷」の世界であると、一般的に思われています。しかし南極は立派な陸地であり、活火山も存在していたりします。この火山の周りには雪が少なく、何と温泉もあるというのです。南極で温泉…。生涯に一度でいいから、入ってみたい気もしますね(ペンギンを見ながら)。


16.宇宙
 1957年、ソ連は初の人工衛星スプートニク一号の打ち上げに成功しました。
 これ以降宇宙開発が盛んになると共に、宇宙空間の領土問題が発生しました。
1963年、国連総会は宇宙空間はどこの国家にも属さないという『宇宙空間の探査及び利用における国家活動を規制する法原則宣言』を採択しました。そして国連に「宇宙平和利用委員会」が設置され、1967年に『月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(宇宙条約)』が締結されました。
 宇宙条約では宇宙空間の探査利用の自由、国家の領有権の否定、宇宙飛行士に対する援助(救助)、また宇宙空間における国家及び非政府組織の責任が挙げられています。また、平和利用として、次の条文� �あります。

宇宙条約
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 第4条 大量破壊兵器の打上げ禁止
  条約の当事国は、あらゆる大量破壊兵器を運ぶ物体を宇宙に飛ばしたり、宇
  宙や他の天体に設置できない。また月その他の天体に、平和利用以外の、あ
  らゆる軍事施設の設置をする事を禁止する。
--------------------------------------------------------------------

 宇宙空間に核兵器を持って行っては駄目です。月などに設置しても駄目です。月や他の天体に軍事基地や施設を設置するのも、軍事演習や実験を行うもの駄目です。
 ちなみに大量破壊兵器を「運ぶ物体」を宇宙に持っていく事が禁止されているだけなので、核兵器そのものが飛ぶ場合には、条約違反にはなりません。� �わゆる、大陸間弾道弾の事ですね。ついでにこれも禁止してくれればいいのに。
 こうして宇宙空間はどこの領域でもなく、自由に利用できます。しかし領空のところでも書いたのですが、どこから領空でどこから宇宙空間なのか、まだはっきりとは決まっていません。



17.まとめ
・国家は自国の領域内を自由にできる「領土主権」を持っている。
・領土を手に入れるには、征服、先占、時効、割譲、添附などの方法がある。
・火山の噴火などでできた新島は、国際問題になりやすい。
・河川や港湾を「内水」、領土から12カイリ内を「領海」という。
・島国の場合、島同士を線で結んで一つの大きな領域にする「群島水域」制度がある。
・領空は領海の上空を指し、排他的な主権を持っている。但し、宇宙空間は領空に入らない。
・国際河川と認められれば、基本的に外国船も自由に航行できる。
・国際運河は条約により、自由な行き来ができる。
・無害通航権とは、相手国に害を及ぼさなければ、領海内を自由に航行できる権利である。
・狭い国際� �峡内も、海洋法条約により通航はできる。
・領空内を飛行するには相手国の許可が必要。或いは条約を結ぶ必要がある。
・公海は「公海自由の原則」に基いて、どこの国にも属していない。
・公海上の船舶は、基本的に旗国の管轄権内にあるが、国際的犯罪を犯した場合はその限りではない。
・国際的犯罪とは、海賊行為、海洋汚染、奴隷移送などである。
・犯罪防止のため、各国には臨検や追跡権などの権限がある。
・犯罪防止や衛生管理の為に、領海線より最大24カイリ内において管轄権を行使できる水域を「接続水域」という。
・大陸棚とは沿岸より続く、水深200m程の比較的浅い部分の事。鉱物資源の40%はここに眠っているといわれている、
・大陸棚の開発権利は、沿岸国が持っている。・大陸棚が続いている場合、最大350カイリまで開発ができるが、200カイリを超えて開発した場合、生産された鉱物や金額の最大7%を国際機構に支払わなければならない。
・沿岸より最大200カイリを排他的経済水域とし、漁業権は沿岸国にある。
・大陸棚や排他的経済水域から離れた深海底の開発は、全ての人類の共同遺産とされている。
・南極はどこの国の領土でもなく、軍事施設の設置や演習は認められない。
・宇宙もまた、どこの国の領土でもない。南極と同じく、軍事施設の設置はできない。


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