2012年4月26日木曜日

地図屋の視点: 環境問題


印刷に使用する洋紙が6月頃から、再び値上がりはじめています。

大手製紙メーカーでは下記の発表が既に出ています。

三菱製紙 6月1日から

紀州製紙 6月1日から

北越製紙 6月1日から

大王製紙 7月1日から

日本製紙グループ 10月1日から

その他の製紙会社もホームページ上では発表していませんが、軒並み15%程度の値上がり幅です。

ちなみに「洋紙」とは機械漉きによってパルプから作られる紙のことの総称です。

洋紙とは大きく分けて2種類あり、印刷用に使用される印刷用紙等と段ボール等に使用される板紙に分類されます。

今回は値上がりは両方の洋紙ともです。

その要因としては、パルプ原料の世界的な需要増が上げられます。

主に中国やインドなどの最近成長の目覚ましい新興国では、急激に紙の需要が上がっており、バージンパルプだけでなく、特に古紙の需要が相当上がっています。

古紙回収は、ずいぶん昔から「ちりがみ交換」などで知られ、古紙回収業者が古新聞や古雑誌を一般家庭から買い取り、製紙会社に古紙パルプ原料として売ります。

これは非常によく出来た伝統的なリサイクルシステムで、製紙メーカー・消費者・回収業者の間でくるくるとうまいこと、お金と原料が回っていました。

これがおかしなことになってきたのが、自治体による古紙回収が始まった頃からです。


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これまで自然淘汰的に限られた業者で行われていた古紙回収業が、自治体という大きな回収先ができてしまったため、回収業者が回収できず、結果的に製紙会社に古紙が回らなくなってしまいました。

そうして自治体は回収した古紙をリサイクル業者に処理委託します。

つまり自治体は、非常に優れた伝統的リサイクルシステムを壊滅させ、税金による回収をし、税金による処理をはじめたわけです。

さらに問題になるのが、リサイクル業者はこれを適正な処理をせず、さらに古紙回収業者に転売したり、海外に特に中国の業者に売ったりしました。

この状態を放置していたため、国内の古紙パルプが海外に流出し、結果古紙不足に陥り、洋紙の値上げにつながりました。

また、もうひとつの負の方向性があります。

それは平成12年に制定された「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」通称「グリーン購入法」が元凶です。

グリーン購入法では古紙配合率が70%以上の洋紙しか扱えなくなりました。

この結果、市場には古紙配合率が70%~100%の紙ばかりが出回り、古紙のリサイクルのリサイクルのリサイクルが出回るようになり、パルプが劣化。その結果、相当の薬品を使用して再生したり、ついには繊維のズタズタになった古紙だけでは紙が再生できなくなってしまいました。


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つまり、古紙配合率をあまり高くすると再生の為の環境負荷が高まったり、再生できなくなったりするので、グリーン購入法が施行しれてから、余計環境負荷が高まる結果になったのです。

いかにも現場を知らない役人が、鉛筆を舐めて考え出した法律らしいです。

この国と自治体のダブルの政策ミスの煽りをまともに受けた製紙会社はついにはグリーン購入法に適合しないバージンパルプを古紙と偽って配合してしまい「環境偽装」などと言われて2年ほど前に話題に上りました。

行政側は自分たちの蒔いた種であることは棚に上げて、製紙会社や印刷業者を追及し、偽装された古紙を回収させ、グリーン購入法に適合した用紙で刷り直しをさせました。

これまで古紙配合率偽装の責任を取らされたのは製紙会社と印刷業者ばかりで、グリーン購入法を管轄する環境省は何の責任も問われていません。

はっきり言って物作りの原料調達方法に素人(行政)が口を挟むことが間違っていたわけです。

製紙会社の肩を持てば、ずっと以前から古紙100%と表示してあっても、バージンパルプは数%は加えていたわけですし、逆にバージンパルプ100%の商品であっても古紙は数%含んでいたわけです。それが目的にあわせた用紙の品質として、最も適合性がいいからそうしてきたわけ、これが製紙会社として洋紙を作り続けてきた物作りのノウハウというやつなのです。

最近になって製紙会社からの要望で、ようやくグリーン購入法が緩和されるようです。


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市場に流通する古紙とバージンパルプの割合は製紙会社にコントロールさせた方がよほど日本の市場そのものも守れるように思います。

政策ミスを発端とした、古紙の海外流出と市場の古紙パルプの異常な劣化が、結果として紙の値上げを招いたのだと思います。

ここにも官製不況があったようです。

ちなみに、そもそもバージンパルプが環境を破壊することはないと私は思っています。

というのも紙を作るために木を切ることはまずないからです。

パルプは木材チップから作りますが、このチップは木の破片なので、丸々一本の木からチップを作ることはあり得ません。

木材チップは建設用や工業用に切り出した際に出る、木材の皮や木くずなど、商業的に利用価値のなくなった木材廃棄物から作られるからです。

最近ではこの原料仕入れも安定的でないため、パルプ用の森林を育てている会社もあるようです。

丸々1本の木をパルプにするのかどうかわかりませんが、森林のないところからパルプ用の森林を育てていくわけですから環境負荷はほとんどないのと同じです。

バージンパルプの良いところは、脱色や漂白など、古紙パルプで必要な環境負荷がほとんどかからないところにあります。問題とするなら大量の水を消費するというくらいでしょうか。でもこれは鉄鋼など他の工業とはそんなに変わるものでありません。

つまり、それほど行政が目の色を変えるほど古紙配合率の低い洋紙が環境を破壊していないということです。


どちらにせよ紙は生活必需品です。紙の供給が不安定になることは、我々の生活に直結する問題です。

なるべく身の回りには、安くて品質の良い紙があってほしいものです。

そのためには、自分で紙を使用するときや、グリーン購入法にかからない使用範囲ではできるだけ古紙配合率の低い紙を使うことを心がけた方がよさそうです。

できるだけバージンパルプの洋紙を買って、使い終わった古紙は自治体に出さずに回収業者へ出すことが、本当のエコだと私は思います。

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